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Small category


 PDF |Folk model structure|Thomason model structure|

 圏(category)において対象全体が集合のとき小圏(small category)と呼ぶ。なんといっても元が取れるところがうれしい。Small categoryは圏論でのlimitなどを考える際のindexとして利用される場面が多い。もちろんそれ以外にも幾何学的な情報としてsmall categoryを扱う事もできる。最近では200ページにわたるHigginsのLecture【Hig71】がdownloadできるようになった。通常のcategory、small categoryとgroupoidに関しては詳細に書かれている。

 Small categoryで重要なのがその分類空間というものだ。これにより議論は幾何学的対象に移るので何かと都合が良い。つまり、small categoryのcategoryから位相空間の圏へのfunctorと考えられる。これは、small categoryからそのnerveを考えsimplicial setのcategoryを経由し、geometric realizationをとるというものだから、分類空間自体はかなり複雑だ。この性質についてQuillenの【Qui73】の前半は非常に重要な事が書かれている。特にTheorem A、Theorem Bと呼ばれるものである。

 Small categoryをobject、Functorをmorphismとしたcategoryを考えると、この分類空間をとってweak homotopy equivalenceになるものをweak equivalenceとしてmodel structureが定義できる。これはThomasonが【Th80】で考え出して、正確にはnerveのfunctorでsimplicial setのcategoryと絡ませた。彼はsimplicial setからsmall categoryへの逆対応を考えたが、それだけでは不満だったようで単体の重心細分を踏まえて複雑なfunctorを付加している。
 もう一つ自然に考えるとすれば、圏のequivalenceをweak equivalenceに指定するstructureも考えられる。こちらのほうはRezkの【Re00】、あるいは【JT91】が詳しい。いずれにしろ、どちらもcofibranty generatedなmodel categoryである。
 Small categoryでhomotopy論を行うときに、上記のようなmodel categoryとして扱うのではなく、Λ-cofibration categoryとして主にMinianが考えている【Min02】【Min02'】。これはinterval objectを0→1の細分で複数用意しておいて、それをhomotopyとして利用しようというものである。つまり、Folk modelではnaturai isoを、Thomason typeではnatural transformationを、それぞれ空間で言うところのhomotopyとして考えるのに対し、natural transformation sequenceをhomotopyとして考えるという事である。これは同値関係としてもnatural transformationが一つあるというよりは腑に落ちる。Minianはsmall categoryでのCW複体に相当するものは何かも考えている【Min05】【Min02'】

 Small categoryをobjectの集合とmorphismの集合と考え、その間のsource、target、composition、identityというmapが与えられてassociativityとunit conditionを満たすものと考えられる。この際、object、morphismを位相空間と、これらstructure mapが連続という具合に置き換えればTopological categoryの定義となる。一般的にはtopological categoryの分類空間がsimplicial spaceを経由して構成できる【Se68】。またone objectのsmall categoryはmonoid、topological categoryはtopological monoidを意味している。
 また、objectがBという集合(空間)の(topological)small categoryは、B×B上のfiber wise set(space)のmonoid objectと考えることができる。ただし、ここでのmonoidal structureはsymmetricではなく、unitはdiagonalのΔ:B→B×Bである。
 Small categoryの定義からidentityとcompositionを忘れたものをquiverと呼ぶ。有向グラフとも呼ばれるのは、矢印の集合と頂点の集合からなるものと考えられるからだ。また、同じ集合の直積上の集合におけるcomma categoryと考えても良いかもしれない。とりあえず、small categoryのcategoryからはquiverのcategoryへforgetful functorが定義され、これはleft adjointを持つ。つまり、quiverからfree categoryがpath algebraと同様の手法で構成できる。quiverの表現といった際はこのsmall categoryの表現という意味である。quiverのcategoryのmodel structureは【BT08】にある。
 Posetはpartial ordered setの略で、(半)順序集合ということである。これもまた、順序の小さい方から大きい方へ、一本のmorphismがあると思うと、small categoryが構成できる。このsmall categoryはHomが一点か空集合なので、分類空間を取るとsimplicial complexとなる。【Hoy07】によると重心細分を2回とると、どんなsmall categoryもposetになる。

 Normやmeasureを持ったsmall categoryを考えている人もいる【Gra06】【Yet03】。categoryのsizeとして、large categoryとsmall categoryがequivalentになる状況を考えているのは【FS95】である。Leinsterはfinite small categoryについてEuler charastaristicを様々な方法で定義している。objectとarrowから行列を考え、Mobius inversionを持つとき。weight、coweightを持つとき【Lei06】。1変数の有理関数としての記述【Lei07】などである。Small categoryのcohomology理論として、Thomason cohomologyというfunctorを係数に持ったcohomologyを考えている人もいる【CNT12】。